・・・舞台で、私の着ている青い衣裳を、ずたずた千切り裂きたいほど、不安で、いたたまらない思いでございました。あたしは、ちっとも、鉄面皮じゃない。生ける屍、そんなきざな言葉でしか言い表わせませぬ。あたし、ちっとも有頂天じゃない。それを知って下さるの・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・すすけた黄褐色の千切り形あるいは分銅形をしたものの、両端にぼんやり青みがかった雲のようなものが見える。ニコルを回転すると、それにつれて、この斑点もぐるぐる回る。自分も学生時代にこれに関する記事を読んでさっそく実験してみたが、なかなか見えない・・・ 寺田寅彦 「錯覚数題」
・・・者が「藤森さんやきみやぼくの小説を材料に、千切り大根の切り方の練習でもするつもりらしい。」「中條百合子・小林多喜二――せまい文学理解と、あやまった政治家的うぬぼれによって、われ一人プロレタリア作家という顔をし、仲間のすべての労作をめちゃめち・・・ 宮本百合子 「前進のために」
出典:青空文庫