・・・又雑婚が盛んになって総ての犬が尽く合の子のカメ犬となって了ったように、純粋日本人の血が亡びて了うと悲観した豪い学者さえあった。国会とか内地雑居とかいうものが極楽のように喜ばれたり地獄のように恐れられたりしていた。 二十五年前には東京市内・・・ 内田魯庵 「二十五年間の文人の社会的地位の進歩」
・・・大阪弁と神戸弁の合の子のような言葉が使われているから、読者はあれを純大阪の言葉と思ってはならない。そういえば、宇野氏の「枯木の夢」に出て来る大阪弁はやはり純大阪弁でなくて大和の方の言葉であり、「人間同志」には岸和田あたりの大阪弁が出て来る。・・・ 織田作之助 「大阪の可能性」
・・・オムレツと焼玉子の合の子のようなものが、メニューの中にあった。「味つき」と「味なし」と二通りあった。「オイ、味なし」。「味つき」。そういうどら声があちらこちらに聞こえた。今は雑使婦か何かの宿舎になっているらしい。そのボロボロの長屋に柿色や萌・・・ 寺田寅彦 「病院風景」
・・・まるで蕈とあすなろとの合の子みたいな変な木が崖にもじゃもじゃ生えていた。そして本当に幸なことはそこには雷竜がいなかった。けれども折角登ってもそこらの景色はあんまりいいというでもない、岬の右も左の方も泥・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・私生児を育て抜いた所に重点があるよりは、むしろ社会的の束縛から愛する者との間の子を、私生児としての形でしか持てなかった事、更にその子を育てる上に日夜世間の古い型の考えと戦わねばならなかった事、ここに作者は人間性への広い訴えをこめていたのでは・・・ 宮本百合子 「「女の一生」と志賀暁子の場合」
出典:青空文庫