・・・ なんじを訴うる者と共に途に在るうちに、早く和解せよ。恐らくは、訴うる者なんじを審判人にわたし、審判人は下役にわたし、遂になんじは獄に入れられん。誠に、なんじに告ぐ、一厘も残りなく償わずば、其処を出づること能わじ。これあ、おれにも、もう・・・ 太宰治 「鴎」
・・・一昨夜、突然、永野喜美代参り、君から絶交状送られたとか、その夜は遂に徹夜、ぼくも大変心配していた処、只今、永野よりの葉書にて、ほどなく和解できた由うけたまわり、大いに安堵いたしました。永野の葉書には、『太宰治氏を十年の友と安んじ居ること、真・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・と私は山岸さんに言い、それは私ひとりだけが知っている、ささやかな和解の申込みであったのだが。けれども、この世に於いて、和解にまさるよろこびは、そんなにたくさんは無い筈だ。私は、山岸さんと同様に、三田君を「いちばんよい」と信じ、今後の三田君の・・・ 太宰治 「散華」
・・・「なんじを訴うる者とともに途に在るうちに、早く和解せよ。恐くは、訴うる者なんじを審判人にわたし、審判人は下役にわたし、遂になんじは獄に入れられん。 誠に、なんじに告ぐ、一厘も残りなく償わずば、其処をいずること能わじ。」 ・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
この一編は、頃日、諭吉が綴るところの未定稿中より、教育の目的とも名づくべき一段を抜抄したるものなれば、前後の連絡を断つがために、意をつくすに足らず、よってこれを和解演述して、もって諸先生の高評を乞う。 教育の・・・ 福沢諭吉 「教育の目的」
・・・頽廃的なブルジョア・インテリゲンツィアの典型的代表者であり、うぬぼれのつよい個人主義者であるジイドのブルジョア的良心がどうしても和解することが出来ない多くのものがソヴェトには在り、ジイドの怒りは反動的なブルジョアジーの無力な敵意を反映してい・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・性的牽引としての恋愛と結婚とはアグネスの内部で自由と奴隷の二つの極端に立たせられ、観念の上においてさえ決して和解出来ぬもののように現れている。彼女を愛す善良で進歩的な男たちが、新しい内容で男女の結婚生活の可能を説得しようとしても、アグネスは・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
・・・兄弟愛 和解 「悪霊」を読んでみたい。 Dのリアリズム 自然主義とのちがい○顕微鏡の力と予言者の視力とをかね備えた 彼の幻想家的な知力にとむリアリズム、p.202○一切を彼は不思議に内部から・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・自分等二人は、陰気な気分を紛らし得ず――Aが、心から歓んで和解を迎えたのではなく、如何にも已を得ず義務と云う感で承知したので――、肴町までの長い電車の間、私は殆ど一言も口を利かなかった。彼は思想に出た「犬」と云う面白い小説を書み、自分は明星・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・国民文芸会有志の熱心なる調停に動かされ、和解す。その際松竹より提出せし金円は著作権法改正運動に使用する条件を附して劇作家協会に寄附する。 一九二六年。劇作家協会と小説家協会とを合同せしめ、新に文芸家協会を作ることに尽力す。この年、四十歳・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫