・・・それは、自己防衛する術を知らぬ、動物の報復について考えを要せぬからであります。それ故に、僅かに、神の与えた聡明と歯牙に頼るより他は、何等の武器をも有しない、すべての動物に対して、人間の横暴は極るのであります。 斯の如きことを恥じざるに至・・・ 小川未明 「天を怖れよ」
・・・この笑いを作者は、惨酷に甚兵衛を扱いつづけていた継母、異母弟への報復の哄笑として描き出している。義民、英雄というものに向けられて来た、盲目な崇拝の皮を剥いで示そうとしているのである。「極楽」の退屈さに苦しんで、地獄を語り合うときばかりは・・・ 宮本百合子 「鴎外・芥川・菊池の歴史小説」
・・・舟橋聖一氏が昨今提唱する文学におけるリベラリズムの根源は、そういう反動的憎悪とかつて進歩の旗のにないてであったものへの報復的アナーキーの危険の上にたっているのを見て、私はつよくそのことを考えるのである。 ロシア文学史は、どの時代をとって・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・しかも現実は容赦ないから、その生活的思意の無方向のまま矢張り我々は歴史の因子として厳然と存在しつづけ、そのような怠慢で自分が存在したことの報復は極めて複雑な社会全般の事情の推移そのものから蒙って生きて行かなければならない関係におかれているの・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
・・・ペトロパヴロフスクの要塞監獄監禁が、その行為に対する報復であった。この時ゴーリキイが死刑を免がれたのは、ゴーリキイ処刑反対の大デモンストレーションがロシア国内のみか、ヨーロッパ諸外国で行われたからであった。 翌年、解放運動の資金を得るた・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
出典:青空文庫