・・・ まあ、お民さん許で夜更しして、じゃ、おやすみってお宅を出る。遅い時は寝衣のなりで、寒いのも厭わないで、貴女が自分で送って下さる。 門を出ると、あの曲角あたりまで、貴女、その寝衣のままで、暗の中まで見送ってくれたでしょう。小児が奥で・・・ 泉鏡花 「女客」
・・・私、もしかしたら盲腸ぐらいもっていてアラームベルの役をさせた方がいいかもしれない、夜更しをするとジリジリ! たべすぎそうになるとジリジリ! 仕事のときは、但シベルがなり出したら、あなたの目ざましのように足の方へ蹴込んでしまう? まさかね。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 第一夜更ししてのむべき薬をのまなかった事、只一寸の間、足袋なしで居た事を皆、この熱の原因として責められる。「お前は、求めて病気をして居るんだから。 そう云われるのが何よりつらい。 熱の出たと云う事よりも苦しい事であ・・・ 宮本百合子 「熱」
出典:青空文庫