・・・又戒名は帰命院妙乗日進大姉である。僕はその癖僕の実父の命日や戒名を覚えていない。それは多分十一の僕には命日や戒名を覚えることも誇りの一つだった為であろう。二 僕は一人の姉を持っている。しかしこれは病身ながらも二人の子供の母に・・・ 芥川竜之介 「点鬼簿」
・・・あとは大姉さんに、お願いいたします。ラプンツェルを大事にしてやって下さい。」と祖母の言ったとおりに書いて、ほっと溜息をついた。 その三 きょうは二日である。一家そろって、お雑煮を食べてそれから長女ひとりは、すぐに・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・何々大姉と刻してある。真逆に墓表とは見えずまた墓地でもないのを見るとなんでもこれは其処で情夫に殺された女か何かの供養に立てたのではあるまいかなど凄涼な感に打たれて其処を去り、館の裏手へ廻ると坂の上に三十くらいの女と十歳くらいの女の子とが枯枝・・・ 寺田寅彦 「根岸庵を訪う記」
出典:青空文庫