・・・何しろのめのめと我々の前へ面をさらした上に、御本望を遂げられ、大慶の至りなどと云うのですからな。」「高田も高田じゃが、小山田庄左衛門などもしようのないたわけ者じゃ。」 間瀬久太夫が、誰に云うともなくこう云うと、原惣右衛門や小野寺十内・・・ 芥川竜之介 「或日の大石内蔵助」
・・・三宝の利益、四方の大慶。太夫様にお祝儀を申上げ、われらとても心祝いに、この鯉魚を肴に、祝うて一献、心ばかりの粗酒を差上げとう存じまする。まず風情はなくとも、あの島影にお船を繋ぎ、涼しく水ものをさしあげて、やがてお席を母屋の方へ移しましょう。・・・ 泉鏡花 「伯爵の釵」
・・・「それは、大慶のいたりだ。」しんから、ほっとなされた御様子であった。「それではもう、何も恐れる事は無い。私も大威張りで媒妁できる。何せ相手のお嬢さんは、ひどく若くて綺麗だそうだから、実は心配していたのだ。」「まったく。」と私は意気込・・・ 太宰治 「佳日」
・・・小説完成の由。大慶なり。破れるほどの喝采にて、またもわれら同業者の生活をおびやかす下心と見受けたり。おめでとう。『英雄文学』社のほうへ送った由、も少し稿料よろしきほうへ送ったらよかったろうに。でも、まあ、大みそか、お正月、百円くらい損しても・・・ 太宰治 「虚構の春」
婦人文芸御発刊の由大慶に存じます。私は今ひどく心臓と脚気で動けないので七月一日には失礼いたしますが、心から発刊のおよろこびを申上げます。〔一九三四年九月〕 宮本百合子 「『婦人文芸』発刊について」
出典:青空文庫