・・・三島には、有名な三島大社があります。年に一度のお祭は、次第に近づいて参りました。佐吉さんの店先に集って来る若者達も、それぞれお祭の役員であって、様々の計画を、はしゃいで相談し合って居ました。踊り屋台、手古舞、山車、花火、三島の花火は昔から伝・・・ 太宰治 「老ハイデルベルヒ」
・・・ 三島大社では毎年、八月の十五日にお祭りがあり、宿場のひとたちは勿論、沼津の漁村や伊豆の山々から何万というひとがてんでに団扇を腰にはさみ大社さしてぞろぞろ集って来るのであった。三島大社のお祭りの日には、きっと雨が降るとむかしのむかしから・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・ とうに別格官幣大社になるはずではあるけれ共、資産のとぼしいばかりに今も尚、幾十年かたここに建てられたと同じ位に居なければならないのであった。 それほど差し迫った生活の味を知らない私共は、真の貧と云う事は知らない。 精神的に慰安・・・ 宮本百合子 「農村」
出典:青空文庫