・・・ 思うままを備忘までに書いてみた、名前を挙げた画家達に礼を失するような事がありはしないかと思うが、素人の妄言として寛容を祈る。 寺田寅彦 「二科会その他」
・・・――余計な事じゃないか、何も坊主の癖にそんな知った風な妄言を吐かんでもの事だあね」「しかしそれが商売だからしようがない」「商売なら勘弁してやるから、金だけ貰って当り障りのない事を喋舌るがいいや」「そう怒っても僕の咎じゃないんだか・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・唯願うらくはかの如来大慈大悲我が小願の中に於て大神力を現じ給い妄言綺語の淤泥を化して光明顕色の浄瑠璃となし、浮華の中より清浄の青蓮華を開かしめ給わんことを。至心欲願、南無仏南無仏南無仏。 爾の時に疾翔大力、爾迦夷に告げて曰く、諦に聴け諦・・・ 宮沢賢治 「二十六夜」
・・・自分のその文章などは「末世の僧の祖師を売る者、妄言当死」と迄頭を垂れている。もしそのような芸術至上の帰依に満ちた芸心があるならば、佐藤氏も「モスクワ」が芸術品かそうでないか位は嗅ぎわけ得て然るべきであった。或る作家が未熟で、下手で書きそこな・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫