・・・――そう云う天竺の寓意譚は、聞くともなく説教を聞いていた、この不幸な女の心に異常な感動を与えました。だからこそ女は説教がすむと、眼に涙をためたまま、廊下伝いに本堂から、すぐに庫裡へ急いで来たのです。「委細を聞き終った日錚和尚は、囲炉裡の・・・ 芥川竜之介 「捨児」
・・・その時のおおぎょうな甲高い叫び声が狩り場の群犬のほえ声にそっくりであるのは故意の寓意か暗合かよくわからない。この三人が、姫君のためにはハッピーエンド、彼らの目には悲劇であるかもしれない全編の終局の後に、短いエピローグとして現われ、この劇の当・・・ 寺田寅彦 「音楽的映画としての「ラヴ・ミ・トゥナイト」」
・・・ 第六十八段、大根が兵士に化ける話は少し怪しいが、次の六十九段と合せて読んで見ると寓意を主として書いたものとも思われる。 迷信とは少し事変るがいわゆるゴシップの人を迷わす例がある。猫又のゴシップの力で犬が猫又になる話や、ゴシップから・・・ 寺田寅彦 「徒然草の鑑賞」
出典:青空文庫