思想問題とか、失業問題とかいうような、当面の問題に関しては、何人もこれを社会問題として論議し、対策をするけれど、老人とか、児童とかのように、現役の人員ならざるものに対しては、それ等の利害得失について、これを忘却しないまでも、兎角、等閑・・・ 小川未明 「児童の解放擁護」
・・・多くの社会政策なるものがやはり、こんなようなもので、多くの人の気付くところには、何等かの対策もするが、人々の気付かないところには、犠牲者を冷酷に看過するといっていゝのです。 私達が、これまでの政治に対して、あきたらないものは、こゝに理由・・・ 小川未明 「街を行くまゝに感ず」
・・・ 平生、内地米のありがたさには気づかずに食っていたのだが『食』は、『衣』『住』と共に、人間が生きて行く上に最も重大なことなので、まずいとなると、それに対する対策は、なか/\真剣でいくらも智恵が働きそうに思われる。 一週間ばかり外米混・・・ 黒島伝治 「外米と農民」
・・・にやられている時に、遺族のものたちをバラ/\にして置いては悪いと云うので、即刻何処かの家を借りて、皆が集まり、お茶でも飲みながらお互いに元気をつけ合ったり、親密な気持を取り交わしたり、これからの連絡や対策や陳情、そういう事について話し合おう・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・毎年、僕は、あれを覗いて、親爺が金ない金ない、と言っても安心していたのだが、こんどだけは、本当らしいぞ。対策を考究しようじゃないか。こまった。こまった。清水忠治。太宰先生、か。」 月日。「冠省。へんな話ですが、お金が必要なんじゃ・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・二人で、対策を研究してみようじゃないか。」 文士は、その日、退屈していたものと見えて、なかなか田島を放さぬ。「いいえ、もう、僕ひとりで、何とか、……」「いや、いや、お前ひとりでは解決できない。まさか、お前、死ぬ気じゃないだろうな・・・ 太宰治 「グッド・バイ」
・・・私は、まじめに、真剣に、対策を考えた。私はまず犬の心理を研究した。人間については、私もいささか心得があり、たまには的確に、あやまたず指定できたことなどもあったのであるが、犬の心理は、なかなかむずかしい。人の言葉が、犬と人との感情交流にどれだ・・・ 太宰治 「畜犬談」
・・・ これに処する根本的対策としては小学校教育ならびに家庭教育において児童の感受性ゆたかなる頭脳に、鮮明なるしかも持続性ある印象として火災に関する最重要な心得の一般を固定させるよりほかに道はないように思われる。 現在の小学校教育の教程中・・・ 寺田寅彦 「火事教育」
・・・に対する対策の一般的指導原理を暗示するようにも思われるのである。 寺田寅彦 「家庭の人へ」
・・・新聞というものの勢力のせいもあるが、一つにはその所業がかなり独創的であって相手の伝統的対策を少なくも一時戸まどいをさせた、そのオリジナリティに対する賛美に似たあるものと、もう一つには、その独創的計画をどこまでも遂行しようという耐久力の強さ、・・・ 寺田寅彦 「時事雑感」
出典:青空文庫