・・・とやっつけ、封建的な屈従を強い、二重の搾取をつづけようとするのだ。 プロレタリア・農民の階級闘争の激化は現実の必要から婦人大衆をも目ざませた。男の働きての失業のため、婦人は最悪の労働条件と闘いながら企業へ参加している。そこで婦人たちも、・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・茶坊主政治は、護符をいただいては、それを一枚一枚とポツダム宣言の上に貼りつけ、憲法の本質を封じ、人権憲章はただの文章ででもあるかのように、屈従の鳥居を次から次へ建てつらねた。 おととしの十二月二十日すぎに、巣鴨から釈放されて、社会生活に・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・そうあきらめて屈従する気分が、日本の女性の感情を重く鈍くかげらしていないのならば、こんなに負担の多い日々を営んでいる日本の女性によってこそ、もっと激しく、もっと決定的に平和への渇望が表明されていいはずだと思う。 日本の帝国主義は、日本の・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・不幸にして、その心理は、日本人民がファシズム権力にひしがれつづけて来た被抑圧的屈従の複雑なコムプレックスをふくんでいる。その心理的コムプレックスには率直にふれそこから解放されようとしないで、「文学理論」で饒舌に表現するよくない習慣ものこって・・・ 宮本百合子 「小林多喜二の今日における意義」
・・・従順と、屈従との差を跨き違える人間は、自分の何事を主張する権威も持たない薄弱さを、「私は女だから」と云う厭うべき遁辞の裡に美化しようとするのみならず、小溝も飛べない弱さを、優美とし「珍重」する男性は、その遁辞を我からあおって、自分等の優越を・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・ 日本のきょうの文学、しかも西欧的なものを意欲していると云われる人々の文学にあるこの奇怪な顛倒と時代錯誤への屈従、追随こそ、批評家を無力にし、骨抜きにしている。別の云いかたをすると、戦後の批評家の多くは、その人自身、国内亡命をしていた人・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・笑いや優越感をとおって屈従に近づけられてゆくのである。 ヴァイニング夫人の「皇太子の教育」と題される文章が「皇太子殿下の御教育」と日本化された翻訳で『文芸春秋』に発表されている。このなかに彼にとって、日本にとって悲劇的な一節がある。皇太・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・ 観念的な用語の上では一見非常に手がこんでいるように見えて、内実は卑俗なものへの屈従であるような現実把握の芸術化の過程に於ける分裂は、その頃「癩」「獄」等によって作家としての活動を始めた島木健作の芸術にも独自な姿で反映している。 石・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・日本のブルジョアジーが薩長閥によって作られた政府の権力と妥協し、形を変えて現れた旧勢力に屈従することによって資本主義が社会へ歩みだしたという特殊な性格をもっている。新しい明治がその中にどんな古さをもっていたかということは樋口一葉の小説にも現・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・を取り戻そうとしはじめてわずか三年たつかたたないのに、日本の理性は再び戦争の挑発と、根の深い日本のファシズムと権力の屈従的なショーヴィニズムとによって危機にさらされようとしている。私たちはやっと芽をふいたばかりの、日本の人間らしさをどうやっ・・・ 宮本百合子 「前進的な勢力の結集」
出典:青空文庫