・・・東の仙人峠から、遠野を通り土沢を過ぎ、北上山地を横截って来る冷たい猿ヶ石川の、北上川への落合から、少し下流の西岸でした。 イギリス海岸には、青白い凝灰質の泥岩が、川に沿ってずいぶん広く露出し、その南のはじに立ちますと、北のはずれに居る人・・・ 宮沢賢治 「イギリス海岸」
「何の用でここへ来たの、何かしらべに来たの、何かしらべに来たの。」 西の山地から吹いて来たまだ少しつめたい風が私の見すぼらしい黄いろの上着をぱたぱたかすめながら何べんも通って行きました。「おれは内地の農林学校の助手だ・・・ 宮沢賢治 「サガレンと八月」
・・・おれのはもっとずっと上流の北上川から遠くの東の山地まで見はらせるようにあの小桜山の下の新らしく墾いた広い畑を云ったんだ。「全体どごさ行ぐのだべ。」「なあに先生さ従いでさぃ行げばいいんだじゃ。」また堀田だな。前の通りだ。うしろで黄いろ・・・ 宮沢賢治 「台川」
種山ヶ原というのは北上山地のまん中の高原で、青黒いつるつるの蛇紋岩や、硬い橄欖岩からできています。 高原のへりから、四方に出たいくつかの谷の底には、ほんの五、六軒ずつの部落があります。 春になると、北上の河谷のあちこちから、沢山・・・ 宮沢賢治 「種山ヶ原」
・・・つまりそれぞれの国は気候も違い、地理的条件が違い、即ち海に近いところ、砂漠ばかりのところ、山地などではそれぞれ天然の産物も違うから特殊な文化がそれらの地理的な特色によって、変化を受けるという意味である。なるほど、同じ日本でも山にかこまれた奥・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
出典:青空文庫