・・・にいっているように、従来現存していたところの人々間の美しい精神的交渉は、漸次に廃棄されて、精神を除外した単なる物的交渉によっておきかえられるに至った。すなわち物心という二要素が強いて生活の中に建立されて、すべての生活が物によってのみ評定され・・・ 有島武郎 「想片」
・・・ 二、プロレタリアートと戦争 一 プロレタリアートは、社会主義の勝利による階級社会の廃棄がなければ、戦争は到底なくならないということを理解する。プロレタリアートの戦争に対する態度は、ブルジョア平和主義者・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・ステッキなど持って歩くと、犬のほうで威嚇の武器と勘ちがいして、反抗心を起すようなことがあってはならぬから、ステッキは永遠に廃棄することにした。犬の心理を計りかねて、ただ行き当りばったり、むやみやたらに御機嫌とっているうちに、ここに意外の現象・・・ 太宰治 「畜犬談」
・・・学者が学問をもって畢生の業と覚悟したるうえは、自身に政治の思想はもとより養うべきも、政壇青雲の志は断じて廃棄せざるべからず。 然るに近日、世間の風潮をみるに、政治家なる者が教育の学校を自家の便に利用するか、または政治の気風が自然に教場に・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・、「ニイチェの『危険な生き方』とドストイェフスキーの英雄的な道徳廃棄論との巧緻な結合であり、しかも以上の二人の天才の倫理的熱情を全く欠いているジイドは」単に「感覚の玄人」として、世界観の飛躍を試みたに過なかった。 日本でジイドは、実に驚・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
出典:青空文庫