・・・丁度森が歩哨を出して、それを引っ込めるのを忘れたように見える。そこここに、低い、片羽のような、病気らしい灌木が伸びようとして伸びずにいる。 二人の女は黙って並んで歩いている。まるきり言語の通ぜぬ外国人同士のようである。いつも女房の方が一・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・丁度森が歩哨を出して、それを引っ込めるのを忘れたように見える。そこここに、低い、片羽のような、病気らしい灌木が、伸びようとして伸びずにいる。 二人の女は黙って並んで歩いている。まるきり言語の通ぜぬ外国人同士のようである。いつも女房の方が・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・ことに相手が我を通そうとする時自分の我を引っ込めるのは、屈服ではないだろうかとよく思う。自分が我を斥けたために相手が勝ち誇ったような顔をすれば、自分はいつも屈辱を感ずる。自分が可哀そうになる。けれどもここで恥じ悲しみ苦しむものは、また自分の・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
出典:青空文庫