・・・哲学で候うの科学で御座るのと言って、自分は天地の外に立ているかの態度を以てこの宇宙を取扱う。Full soon thy soul shall have her earthly freight,And custom lie upo・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・ 又た少女の室では父と思しき品格よき四十二三の紳士が、この宿の若主人を相手に囲碁に夢中で、石事件の騒ぎなどは一切知らないでパチパチやって御座る。そして神崎、朝田の二人が浴室へ行くと間もなく十八九の愛嬌のある娘が囲碁の室に来て、「家兄・・・ 国木田独歩 「恋を恋する人」
・・・憚りながら未だ三十二で御座る。 まさかこの小ぽけな島、馬島という島、人口百二十三の一人となって、二十人あるなしの小供を対手に、やはり例の教員、然し今度は私塾なり、アイウエオを教えているという事は御存知あるまい。無いのが当然で、かく申す自・・・ 国木田独歩 「酒中日記」
・・・それで富岡先生は平気な顔して御座る。大津は間もなく辞して玄関に出ると、梅子が送って来た。大津は梅子の顔を横目で見て、「またその内」とばかり、すたこらと門を出て吻と息を吐いた。「だめだ! まだあの高慢狂気が治らない。梅子さんこそ可い面の皮・・・ 国木田独歩 「富岡先生」
・・・されど若し其の身のある調子とか意気な調子とかいうものは如何なもので御座る、拙者未だ之を食うたことは御座らぬと、剽軽者あって問を起したらんには、よしや富婁那の弁ありて一年三百六十日饒舌り続けに饒舌りしとて此返答は為切れまじ。さる無駄口に暇潰さ・・・ 二葉亭四迷 「小説総論」
出典:青空文庫