・・・ こういう芸術上のグロテスクな傾向が、循環的に吾々の倫理思想や人生観に与える反応はどんなものであろうか。これもその方面の人々の深く考えてみるべき問題の一つではあるまいか。 彫刻部に関する私の心像は空虚である。ただ意味のありそうな・・・ 寺田寅彦 「帝展を見ざるの記」
・・・たとえば安政元年の大震のような大規模のものが襲来すれば、東京から福岡に至るまでのあらゆる大小都市の重要な文化設備が一時に脅かされ、西半日本の神経系統と循環系統に相当ひどい故障が起こって有機体としての一国の生活機能に著しい麻痺症状を惹起する恐・・・ 寺田寅彦 「天災と国防」
・・・六七台も待つ間には、必ず満員の各種の変化の相の循環するのを認める事ができる。 このような律動の最も鮮明に認められるのは、それほど極端には混雑しない、まず言わば中等程度の混雑を示す時刻においてである。 そういう時刻に、試みにある一つの・・・ 寺田寅彦 「電車の混雑について」
・・・結局循環論理のようなものに陥ってしまう恐れがある。また旧い記録例えば記紀のごときものの記事にあるような語源説が信用出来ないという事は既に学者の明白に認めているところである。それではほとんど唯一の有意義な方法と考えられるのは、現在日本人と隣接・・・ 寺田寅彦 「土佐の地名」
・・・南洋では年じゅう夏の島がある、インドなどの季節風交代による雨期乾期のごときものも温帯における春夏秋冬の循環とはかなりかけ離れたむしろ「規則正しい長期の天気変化」とでも名づけたいものである。しかし「天気」という言葉もやはり温帯だけで意味をもつ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・しかし負け惜しみの強い彼の説によると「世界は循環する。いちばんおくれたものが結局いちばん進んでいることになる」というのである。別に議論にもならないから、われわれ友人の間ではただ機嫌よく笑ってすむのである。 友人鵜照君の年賀状観の変遷史を・・・ 寺田寅彦 「年賀状」
・・・三隊互ニ循環シテ上下ス。サレバ客ノ此楼ニ登ツテ酔ヲ買ハント欲スルモノ、若シ特ニ某隊中ノ阿嬌第何番ノ艶語ヲ聞カンコトヲ冀フヤ、先阿嬌所属ノ一隊ノ部署ヲ窺ヒ而シテ後其ノ席ニ就カザル可カラズ。然ラザレバ徒ニ纏頭ヲ他隊ノ婢ニ投ジテ而モ終宵阿嬌ノ玉顔・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・赤道から北極まで大循環さえやるんだ。東京なんかよりいくらいいか知れない。」 耕一はまだ怒ってにぎりこぶしをにぎっていましたけれども又三郎は大機嫌でした。「北極の話聞かせなぃが。」一郎が又云いました。すると又三郎はもっとひどくにこにこ・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
・・・この時には両肩と両腕とでUの字になることが要領じゃ、徒にここが直角になることは血液循環の上からも又樹液運行の上からも必要としない。この形になることが要領じゃ。わかったか。六番」兵卒六「わかりました。カンデラーブル、U字形であります。」・・・ 宮沢賢治 「饑餓陣営」
・・・あれがいま爆発すれば、ガスはすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。」「先生、あれを今すぐ噴かせられないでしょうか。」「そ・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
出典:青空文庫