・・・それはかつてデカルトが『省察録』において用いた如く、懐疑による自覚である、meditari である。それは徹底的な否定的分析でなければならない。彼は『省察録』の第二答弁において証明 dmontrer の仕方に二通りあるという。一つは分析 a・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・若い男や女の勤労者が、真に健康に、立派に階級の前衛として育つために、ソヴェト同盟では、男女青年労働者の待遇の徹底的改善を決定したのである。 その教室を出て、もう一つの教室へ行くと、そこでは若い生徒ではない、もう四十五十の小父さん小母さん・・・ 宮本百合子 「明るい工場」
・・・ 今やわたくしたちは元気よく立ち上ったその肩の力で、人間生活を圧し殺して来た圧迫を徹底的にとりのぞかなければなりません。そして、自分たちのただ一度しかない人生を、自分として納得出来るしかたで充実させて行かなければならないと思います。・・・ 宮本百合子 「明日を創る」
・・・私には、作者有島武郎が自身の内にあった時代的な矛盾によって、一見非凡であって実は平凡な葉子の矛盾に興味を引かれながら、まぎれもないその理由によって芸術の対象としての葉子の現実を徹底的には解剖も解決もし得なかったということを感じるのである。・・・ 宮本百合子 「「或る女」についてのノート」
・・・アンネットは一旦自分を譲ったら徹底的に譲歩する自分の性質、並に必ず反抗するに違いない自分の自由を欲する魂をよく知っている。 中年に成って、アンネットはその恋愛に征服された。彼女は精力的な、社会の下層から身をのし上げた、有名な、派手な、素・・・ 宮本百合子 「アンネット」
・・・このことは、とりもなおさず、過去の文学の休止符はどの辺でうたれたかというきびしい現実を示す一方、この数年の間、日本の民衆生活内部にある若々しく貴重な創造力が、どれほど徹底的に圧殺されてきたかということを証明している。 作家たちは、自分た・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・のであるが、しかし彼が新しい時代に対して抱いたのはただ恐怖のみであって、新しい建設への見通しでもなければ、新しい指導的精神の思索でもなかった。『樵談治要』のなかに彼は「足軽」の徹底的禁止を論じている。足軽は応仁の乱から生じたものであるが、こ・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・より見れば自分のこの傾向は至極徹底的であった。すべての人が自分を捨ててもいい。人が自分を捨てる前に自分は既にその人を捨てているのである。自分は孤立の淋しさを恐れない。それを恐れるのは自分の独立と自由とが完全でない証拠に過ぎないから。自分が人・・・ 和辻哲郎 「自己の肯定と否定と」
・・・それのもたらした新事実をあげれば、まず自然科学の進歩、社会主義の勃興、一般人民の物質的享楽への権利の主張、徹底的な虚無主義の出現――芸術上においては様式の単純化、日常生活の外形的な細部の描写の成功などであるが、そこに著しい進歩があったとは言・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
・・・ 私の努力はそれと徹底的に戦って自己の生活を深く築くにある。私の心は日夜休むことがない。私は自分の内に醜く弱くまた悪いものを多量に認める。私は自己鍛錬によってこれらのものを焼き尽くさねばならぬ。しかし同時に私は自分の内に好いものをも認め・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫