・・・はじめから私の意図は、たった一つしか無かった。私は、最後の一通を受け取ったときの感動を書きたかったのである。それは、北海派遣××部隊から発せられたお便りであって、受け取った時には、私はその××部隊こそ、アッツ島守備の尊い部隊だという事などは・・・ 太宰治 「散華」
・・・一巻の創作集の中から、作者の意図を、あやまたず摘出してくれる。山岸君も、亀井君も、お座なりを言うような軽薄な人物では無い。この二人に、わかってもらったら、もうそれでよい。 自作を語るなんてことは、老大家になってからする事だ。・・・ 太宰治 「自作を語る」
正直に言うことに致しましょう。私は、これから書こうとする小説、または、過去に於いて書いた小説の意図、願望、その苦心を、あまり言いたくないのです。それは、私の虚傲からでは、ないと思うのです。書いてみて、それが相手に受け入れら・・・ 太宰治 「正直ノオト」
・・・りまして、或いは謹厳を装い、或いは美貌をほのめかし、あるいは名門の出だと偽り、或いはろくでもない学識を総ざらいにひけらかし、或いは我が家の不幸を恥も外聞も無く発表し、以て婦人のシンパシーを買わんとする意図明々白々なるにかかわらず、評論家と云・・・ 太宰治 「小説の面白さ」
・・・これは聴覚に関する音楽から類推して視覚的音楽を作ろうという意図から起こったものであろうが、これはおそらく誤った類推による失敗であろうと思われる。耳は音自身を聞き、しかもこれを無意識に分析しうる特殊の能力をもっている。しかし目はその映像の中に・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・しかし監督の意図など無視して登場し活躍しているからおもしろい。 蛮人の王城らしい建物が映写される。この建物はきわめて原始的であるが一種の均整の美をもっている。素人目にはわが大学の安田講堂よりもかえって格好がいいように思われる。デテイルが・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・が乏しいせいであって、そういうものをはじめから意図しないらしい作者の罪ではないようである。自分の目にはいわば一つの共産労働部落といったようなものに関する「思考実験」の報告とでもいったようなものが全編の中に織り込まれているように思われる。それ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
・・・と名づける映画はまだ見ないが、成効不成効は別問題として、製作者の意図はやはりこの「時の器械」をねらったものであろう。 現代の映画を遠い未来に保存するにはどうすればいいかの問題がある。音声の保存はすでに金属製の蓄音機レコード原板によって実・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・もとよりただ、一つの貧しい参考資料を提供するという以外になんらの意図はないのである。そういうわけで、もちろん、論文でもなく教程でもなく、全く思いつくままの随筆である。文学者の文学論、文学観はいくらでもあるが、科学者の文学観は比較的少数なので・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
近代の物理科学は、自然を研究するための道具として五官の役割をなるべく切り詰め自然を記載する言葉の中からあらゆる人間的なものを削除する事を目標として進んで来た。そうしてその意図はある程度までは遂げられたように見える。この「a・・・ 寺田寅彦 「感覚と科学」
出典:青空文庫