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・・・巌本撫象が二葉亭は哲学者であるといったのを奇異な感じを以て聞いていたが、ドストエフスキーの如き偉大な作家を産んだ露国の文学に造詣する二葉亭は如何なる人であろうと揣摩せずにはいられなかった。 これより先き、私はステップニャツクの『アンダー・・・
内田魯庵
「二葉亭余談」
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・・・ここにおいて飛耳長目の徒は忽ちわが身辺を揣摩して艶事あるものとなした。 巴里輸入の絵葉書に見るが如き書割裏の情事の、果してわが身辺に起り得たか否かは、これまたここに語る必要があるまい。わたしの敢えて語らんと欲するのは、帝国劇場の女優を中・・・
永井荷風
「十日の菊」