・・・この際に当りて蕪村は句法の上に種々工夫を試み、あるいは漢詩的に、あるいは古文的に、古人のいまだかつて作らざりしものを数多造り出せり。春雨やいざよふ月の海半春風や堤長うして家遠し雉打て帰る家路の日は高し玉川に高野の花や流れ・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・これその演説中数多如来正にょらいしょうへんちに対してあるべからざる言辞を弄したるによって明らかである。特にその最後の言を見よ、地下の釈迦も定めし迷惑であろうと、これ何たる言であるか、何人か如来を信ずるものにしてこれを地下にありというものあり・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・彼らはいかに数多く一つから一つへと書きまわろうとも、ブルジョア的世界観の上に立っている以上主観の真の意味における発展はない。いきおい陳腐な本質の粉飾としての形式主義に、芸術至上主義に堕さざるを得ない。 この点プロレタリア作家は全く根底を・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・胸には数多の注射のあとがあった、どんなに苦しかったんだろう。 まああの小さな体で居て、情ない。 私は袴をぬいで帯を結び足元に女中は泣き伏して自分がうっかりして居たばっかりにとんでもない事になって仕舞って何とも申しわけがございません、・・・ 宮本百合子 「悲しめる心」
・・・植込まれた楓が、さびてこそおれ、その細そりした九州の楓だから座敷に坐って、蟹が這い出した飛石、苔むした根がたからずっと数多の幹々を見透す感じ、若葉のかげに一種独特な明快さに充ちている。茶室などのことを私は何も知らないが東京や京都で茶室ごのみ・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
・・・ 如何に弟達は、立派に又、数多あっても、何かにつけ細かに心づけて呉れるものは、妹に及ぶものはないのである。 私は此の歓喜を永く記憶するために、この短かい一篇を記すと同時に、親切な、筆を以て、細かに、「生い立ちの記」を年毎に月毎に日毎・・・ 宮本百合子 「暁光」
・・・ それにひきつづく略十年間、一九三三年頃まで文学の主潮はプロレタリア文学にあり、日本の歴史のふくむ複雑な数多の原因によってこの潮流の方向が変えられると共に、文学は、その背景である社会一般の生活感情にあらわれた一種の混迷とともに画期的な沈・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・ 其故、こちらの婦人の生活を批評しようとしても、其処には殆ど無数の差別が必される訳なのでございます。 数多の人種が、混り、殖民化の歴史を持って居る国の女性としては当然な事でございますでしょう。が、先ず大体三つに分けて見ましょう。・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・そして、数多の無智と愚劣な悲劇を起すブルジョア的性別誇張第一頁がはじまる。 ソヴェト同盟では、共学は共働という社会主義的見地から、この時機は注意ぶかく、然し快活に次の時代へと進められるのだ。 特に、ピオニェールに組織されている少年少・・・ 宮本百合子 「砂遊場からの同志」
時 神の第十瞬期処 天の第二級天の上神 ヴィンダーブラ ミーダ カラ イオイナ その他 此等の神々の使者数多。天の第二級雲の上にある宮。もくもくした灰色又は白の積雲・・・ 宮本百合子 「対話」
出典:青空文庫