・・・手なんぞは極小くて、どうしてあれで大金を払い出すことが出来るだろうと怪まれる。一体金と云う概念については、この女程分からずにいるものは少かろう。その位だから、我身の未来なんぞと云うことも、秘蔵子が考えないと同じように考えないでいる。 こ・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・さて、此から私の書き並べて行こうとする本の中で真個に読んだのは極小部分である。其れ等の本を近いうちに読んで見たいと思っているのであるから、此処に其名を書くことは、貴方も御読みになりますか、と云う心持である。其れ故決して批評でもなければ、推薦・・・ 宮本百合子 「最近悦ばれているものから」
・・・ 考えて見るのに、私は、瀧田氏の極小部分しか知らない。而も、その小部分によほど、弱音器がかけられていると思う。大人は子供に水を割った葡萄酒を飲ませる。――そんな意味で、ひとりでに、極自由な、溌溂と全幅の真面目を発揮する氏の風貌に接する機・・・ 宮本百合子 「狭い一側面」
出典:青空文庫