・・・既にその機運というか、予感は、きのうきょう以前にすべての文学を愛す者の感覚に迫って来ていたのである。 日常生活の緊張から云っても、複雑さから云っても、刺戟のつよさから云っても、人々は文学にこれまでより肺活量の多いものを、生活力の旺なもの・・・ 宮本百合子 「文学の流れ」
・・・彼は民衆の力の勃興を眼前に見ながら、そこに新しい時代の機運の動いていることを看取し得ないのであった。正長、永享の土一揆は彼の三十歳近いころの出来事であり、嘉吉の土一揆、民衆の強要による一国平均の沙汰は、彼の三十九歳の時のことで、民衆の運動は・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・ もし近い内に真実の講和が来るとすれば、それは右の機運が内部に熟している証拠である。 そうでなくただ妥協的に、戦前の状態に復するような講和は成立するわけがない。これほどの大事件が深い痕跡を残さずにすむものか。二 われ・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫