・・・公立八雲小学校の事は大河でなければ竹箒一本買うことも決定るわけにゆかぬ次第。校長になってから二年目に升屋の老人、遂に女房の世話まで焼いて、お政を自分の妻にした。子が出来た。お政も子供も病身、健康なは自分ばかり。それでも一家無事に平和に、これ・・・ 国木田独歩 「酒中日記」
・・・それにこの節は御倹約ということに決定たのですから」「何の御倹約だろう」「炭です」「炭はなるほど高価なったに違ないが宅で急にそれを節約するほどのことはなかろう」 真蔵は衣食台所元のことなど一切関係しないから何も知らないのである・・・ 国木田独歩 「竹の木戸」
・・・その青春時代学芸と教養とに発足する時期において、倫理的要求が旺盛であるか否かということはその人の一生の人格の質と品等とを決定する重大な契機である。倫理的なるものに反抗し、否定するアンチモラールはまだいい。それはなお倫理的関心の領域にいるから・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・「日蓮此の法門の故に怨まれて死せんこと決定也。今一度故郷へ下つて親しき人々をも見ばやと思ひ、文永元年十月三日に安房国へ下つて三十余日也。」 折しも母は大病であったのを、日蓮は祈願をこめてこれを癒した。日蓮はいたって孝心深かった。それ・・・ 倉田百三 「学生と先哲」
・・・それによって、内地へ帰れるか、再び銃をかついで雪の中へ行かなければならないか、いずれかに決定されるのだった。 病気を癒すことにかけては薮医者でも、上官の云ったことは最善を尽くして実行する、上には逆わない、そういう者の方が昇級は早い。軍医・・・ 黒島伝治 「氷河」
・・・ だが、軍医と上等看護長とは、帰還者を決定する際、イの一番に、屋島の名を書き加えていた。――つまり、銃剣を振りまわしたり、拳銃を放ったりする者を置いていては、あぶなくて厄介だからだ。 自分からシベリアへ志願をして来た福田という男があ・・・ 黒島伝治 「雪のシベリア」
・・・ 帰って暫くすると、早大の佐藤さんが、こんど卒業と同時に入営と決定したそうで、その挨拶においでになったが、生憎、主人がいないのでお気の毒だった。お大事に、と私は心の底からのお辞儀をした。佐藤さんが帰られてから、すぐ、帝大の堤さんも見えら・・・ 太宰治 「十二月八日」
・・・時々、一位決定戦を挑み、クラスの者たちは手に汗を握って観戦するという事になるのだが、どうしてもやはり忠五郎に負ける。慶四郎君は起き上り、チョッと言って片足で床板をとんと踏む。それが如何にも残念そうに見えた。その動作が二十幾年後の今になっても・・・ 太宰治 「雀」
・・・ 一体私がこの壷を買う事に決定してから取り落してこわしたのだから、別に私の方であやまる必要もなければ、主人も黙って破片を渡せばいいのではなかったかと、今になってみると考えられもする。これはどちらが正当だか私には分らない、とにかくその時は・・・ 寺田寅彦 「ある日の経験」
・・・ たとえば、スクリーンの映像では、その空間的位置がちゃんと決定されているのに、音響のほうは、聞いただけでその音源の位置を決定する事ができない。この事がいろいろ問題になっているが、文楽でこの問題はつとに解決されている。すなわち、たとえば、・・・ 寺田寅彦 「生ける人形」
出典:青空文庫