・・・「で、御承知でしょうが、青木という人の話もあって、きょう、もう、じきに来て、いよいよの決着が分るんでございますが、それが定まらないと、第一、この子のからだが抜けませんから、ねえ」「そうですとも、私の方の問題は役者になればいいので、吉・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・もこればかりでも青と黄と褐と淡紅色と襦袢の袖突きつけられおのれがと俊雄が思いきって引き寄せんとするをお夏は飛び退きその手は頂きませぬあなたには小春さんがと起したり倒したり甘酒進上の第一義俊雄はぎりぎり決着ありたけの執心をかきむしられ何の小春・・・ 斎藤緑雨 「かくれんぼ」
・・・けれども、決着の土壇場に、保険会社から横槍が出た。事件の再調査を申請して来たのである。その二年前に、勝治は生命保険に加入していた。受取人は仙之助氏になっていて、額は二万円を越えていた。この事実は、仙之助氏の立場を甚だ不利にした。検事局は再調・・・ 太宰治 「花火」
出典:青空文庫