・・・ これにつけてもわれわれはかのアングロサキソン人種が齎した散文的実利的な文明に基いて、没趣味なる薩長人の経営した明治の新時代に対して、幾度幾年間、時勢の変遷と称する余儀ない事情を繰返し繰返して嘆いていなければならぬのであろう。 われ・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・縁語及び譬喩 蕪村が縁語その他文字上の遊戯を主としたる俳句をつくりしは怪しむべきようなれど、その句の巧妙にして斧鑿の痕を留めず、かつ和歌もしくは檀林、支麦のごとき没趣味の作をなさざるところ、またもってその技倆を窺うに足る。縁・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・の中に、ブルジョア共によって壊たれた自由、平等、友愛の焔を守ろうとした人々である。「ゴオチェの美しい言葉をかりて云えば」「焔の如く燃える人々」が、「灰色がかった人」の没趣味で、俗悪で、生気ない金銭支配への屈伏に反逆したのであった。 これ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫