・・・ 北をさすを、北から吹く、逆らう風はものともせねど、海洋の濤のみだれに、雨一しきり、どっと降れば、上下に飛かわり、翔交って、かあ、かあ。 ひょう、ひょう。かあ、かあ。 ひょう、ひょう。かあ、かあ。・・・ 泉鏡花 「貝の穴に河童の居る事」
・・・従って、その地方の子供達が海洋に対する空想、憧憬は、決して同じいものではなかったばかりでなく、これに対する愛憎、喜悲の感情に至るまで、また同じいとはいえなかったでありましょう。 それであるから、概念的に、ただ海といっても、すべての子供達・・・ 小川未明 「新童話論」
・・・及び「海洋気象台」がある。ガードやガソリンスタンドなども両方にある。それだのに、洋画の方には鎧武者や平安朝風景がない。これも不思議である。 帝展には少ないが二科会などには「胃病患者の夢」を模様化したようなヒアガル系統の絵がある。あれはむ・・・ 寺田寅彦 「異質触媒作用」
・・・ただこの問題の決定に必要な十分な海洋観測の材料がないために問題はそのままに問題として残され、やがていつとなく忘れられていた。それが今年の凶作で急に焼木杭に火がついた形である。もしも二十年前に時の政府が奮発して若干の設備を施しそうして今日まで・・・ 寺田寅彦 「新春偶語」
・・・そうして、これらの問題はいずれも工学上のみならず気象学や海洋学上の重要な諸問題とかなり密接につながっていることはおそらく説明するまでもないことであろう。それにもかかわらず、これら眼前の問題に対していくらかでも知識を得たいと思ってライブラリー・・・ 寺田寅彦 「日常身辺の物理的諸問題」
・・・ このような理由から、日本の気候には大陸的な要素と海洋的な要素が複雑に交錯しており、また時間的にも、週期的季節的循環のほかに不規則で急激活発な交代が見られる。すなわち「天気」が多様でありその変化が頻繁である。 雨のふり方だけでも実に・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・そうだとするとこれらの河童捕獲の記事はある年のある月にある沿岸で海亀がとれた記録になり、場合によっては海洋学上の貴重な参考資料にならないとは限らない。 ついでながらインドへんの国語で海亀を「カチファ」という。「カッパ」と似て・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
・・・天文、気象、地質、海洋等に関する自然科学研究に物理学応用の発達して行くのはむしろ当然の事であろうが、普通の意味における物質とはよほど縁の遠い生理学や心理学にまでもだんだん応用が開けて行くようである。 工業における応用も事新しく述べるまで・・・ 寺田寅彦 「物理学の応用について」
・・・アドルフ・シュミットの「海洋学」「地球のエネルギーハウスハルト」「地球物理輪講」キービッツの「空中電気」ワールブルヒの「理論物理学特別講義」ペンクの「地理学輪講」という御膳立にきめた。 ヘルマンの講義はシンケル・プラッツの気象台へ聴きに・・・ 寺田寅彦 「ベルリン大学(1909-1910)」
・・・そのときあちこちの氷山に、大循環到着者はこの附近に於て数日間休養すべし、帰路は各人の任意なるも障碍は来路に倍するを以て充分の覚悟を要す。海洋は摩擦少きも却って速度は大ならず。最も愚鈍なるもの最も賢きものなり、という白い杭が立っている。これよ・・・ 宮沢賢治 「風野又三郎」
出典:青空文庫