・・・それで、使用されたフィルムの陰画の点検によって実際陽画に焼き付けられ映写さるべき部分を選び出すという大きな仕事がここから始まるのである。ティモシェンコのあげた例では千八百メートルの陽画映写フィルムを作るために六千メートルの陰画が消費されてい・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・カメラと焼付けも一体になかなか鮮明で美しいと思われたが、残念ながら録音の方にはまだまだ望むべき多くのものが残されているようである。 寺田寅彦 「映画雑感(5[#「5」はローマ数字、1-13-25])」
・・・たとえば熔融石英のフィルムの面に還元された銀を、そのまま石英に焼き付けてしまうような方法がありはしないかという気がする。とにかく、なんらかの方法でこの保存ができたとして、そうして数十世紀後のわれらの子孫が今のわれわれの幽霊の行列をながめるで・・・ 寺田寅彦 「映画時代」
・・・しかし実際非常に怖い思いをしたので、そのときに眼底に宿った海岸と海水浴場の光景がそのままに記憶の乾板に焼付けられたようになって今日まで残っているものと思われる。 それはとにかく、明治十四年頃にたとえ名前は「塩湯治」でも既に事実上の海水浴・・・ 寺田寅彦 「海水浴」
・・・そうして、その後三十余年の間に時おり手に触れた文学書の、数だけはあるいは相当にあるかもしれないが、自分の頭に深い強い印象を焼き付けたものと言ってはきわめて少数であるように思われる。日本の作家では夏目先生のものは別として国木田独歩、谷崎潤一郎・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
出典:青空文庫