・・・詩とそれらとの関係は、日々の帳尻そうして詩人は、けっして牧師が説教の材料を集め、淫売婦がある種の男を探すがごとくに、何らかの成心をもっていてはいけない。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~ 粗雑ないい方ながら、以上で私のいわん・・・ 石川啄木 「弓町より」
・・・ それから二、三日過ぎて、偶然沼南夫妻の在籍する教会の牧師のU氏を尋ねると、U氏はちょっとした咄の途切れに、「Yはこの頃君のとこへ行くかい?」といった。「二、三日前に来て近々故郷へ帰るといってました。」「その他に一身上の咄は何も・・・ 内田魯庵 「三十年前の島田沼南」
・・・く、時にパウロ公義と樽節と来らんとする審判とを論ぜしかばペリクス懼れて答えけるは汝姑く退け、我れ便時を得ば再び汝を召さん、とある、而して今時の説教師、其新神学者高等批評家、其政治的監督牧師伝道師等に無き者は方伯等を懼れしむる・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・ただ一度檻房へ来た事のある牧師に当てて、書き掛けた短い手紙が一通あった。牧師は誠実に女房の霊を救おうと思って来たのか、物珍らしく思って来て見たのか、それは分からぬが、兎に角一度来たのである。この手紙は牧師の二度と来ぬように、謂わば牧師を避け・・・ 著:オイレンベルクヘルベルト 訳:森鴎外 「女の決闘」
・・・ 木村が私を前の席に導こうとしましたが、私は頭を振って、黙って後ろのほうの席に小さくなっていました。 牧師が賛美歌の番号を知らすと、堂のすみから、ものものしい重い、低い調子でオルガンの一くさり、それを合図に一同が立つ。そして男子の太・・・ 国木田独歩 「あの時分」
・・・その後、先生が高輪の教会の牧師をして、かたわらある女学校へ教えに行った時分、誰か桜井の家名を継がせるものをと思って――その頃は先生も頼りにする子が無かったから――養子の話まで仄めかして見たのも高瀬だった。その高瀬が今度は塾の教員として、先生・・・ 島崎藤村 「岩石の間」
・・・唯一度檻房へ来た事のある牧師に当てて、書き掛けた短い手紙が一通あった。牧師は誠実に女房の霊を救おうと思って来たのか、物珍らしく思って来て見たのか、それは分からぬが、兎に角一度来たのである。この手紙は牧師の二度と来ぬように、謂わば牧師を避ける・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・罪の子、というと、へんに牧師さんくさくなって、いけませんが、なんといったらいいのかなあ、おれは悪い事を、いつかやらかした、おれは、汚ねえ奴だという意識ですね。その意識を、どうしても消すことができないので、僕は、いつでも卑屈なんです。どうも、・・・ 太宰治 「鴎」
・・・ウエークフィルドの牧師である。すなわち、ゴオルドスミス御自身の小説に現われて来る一人物である。そいつだけを尊敬していた。尊敬し切っていた。そいつは、全く、ほとほと、できた牧師である。私も、ひそかに敬慕している。その立派な、できた牧師でさえ、・・・ 太宰治 「春の盗賊」
・・・ゴールドスミスの『ウェークフィルドの牧師』。それからサー・ロジャス・デカバリイ。巴里屋根裏の学者の英訳本などである。中村敬宇先生が漢文に訳せられた『西国立志編』の原書もたしか読んだように思っている。 中学を出て、高等学校の入学試験を受け・・・ 永井荷風 「十六、七のころ」
出典:青空文庫