・・・おそらく小児科も産婆も用のないとこなんだろう。こんなかの女は誰も子を生まない。だから天国は遙に遙に遠い青空だ」柳原女史は、「やあ来た来たむこうから」と不幸な女たちの容貌を見て「感情というものをすっかりすりつぶしちゃった」詰らぬ「兎に角目が並・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・昨今人々の耳目をゆるがしている牛込の産婆の嬰児殺しも、この未解決な社会問題にからんでいる。民主主義保育連盟が子供の生きてゆける場所の建設について、具体的に動こうとしはじめていることの必然が、はっきりここに示されている。 暮から東京裁判は・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
・・・二女が二十一二で、浜田病院に産婆の稽古をして居る。うちにもちょくちょく遊びに来る、色白な、下膨れの一寸愛らしい娘であった。先頃、学校を出たまま何処に居るか、行方が不明になったと云って、夜中大騒ぎをしたことがある。それも、病気を苦にして、休み・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
出典:青空文庫