・・・をしたらしく、戎橋「天狗」の印がはいっており、鼻緒は蛇の皮であった。「釜の下の灰まで自分のもんや思たら大間違いやぞ、久離切っての勘当……」を申し渡した父親の頑固は死んだ母親もかねがね泣かされて来たくらいゆえ、いったんは家を出なければ収ま・・・ 織田作之助 「夫婦善哉」
・・・ンドの後この偉大なる婆さんの得意なるべき顔面が苦し気に戸口にヌッと出現する、あたり近所は狭苦しきばかり也、この会見の栄を肩身狭くも双肩に荷える余に向って婆さんは媾和条件の第一款として命令的に左のごとく申し渡した、自転車に御乗んなさい・・・ 夏目漱石 「自転車日記」
・・・署長もすっかり怒ってしまいある朝役所へ出るとすぐいきなりバキチを呼び出して斯う申し渡したと云います。バキチ、きさまもだめなやつだ、よくよくだめなやつなんだ。もう少し見所があると思ったのに牛につっかかれたくらいで職務も忘れて遁げるなんてもう今・・・ 宮沢賢治 「バキチの仕事」
出典:青空文庫