・・・すなわちダイナマイトで岩山を破砕する音がそれである。「ドカーン」というかな文字で現わされるような爆音の中に、もっと鋭い、どぎつい、「ガー」とか「ギャー」とかいったような、たとえばシャヴェルで敷居の面を引っかくようなそういう感じの音がまじって・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
・・・しかるに明治年間ある知事の時代に、たぶん机の上の学問しか知らないいわゆる技師の建言によってであろう、この礁が汽船の出入りの邪魔になると言ってダイナマイトで破砕されてしまった。するとたちまちどこからとなく砂が港口に押し寄せて来て始末がつかなく・・・ 寺田寅彦 「藤棚の陰から」
・・・私の恋人は破砕器へ石を入れることを仕事にしていました。そして十月の七日の朝、大きな石を入れる時に、その石と一緒に、クラッシャーの中へ嵌りました。 仲間の人たちは、助け出そうとしましたけれど、水の中へ溺れるように、石の下へ私の恋人は沈んで・・・ 葉山嘉樹 「セメント樽の中の手紙」
出典:青空文庫