・・・と同じように、現在の思想家や学者の所説に刺戟された一つの運動が起こったとしても、そしてその運動を起こす人がみずから第四階級に属すると主張したところが、その人は実際において、第四階級と現在の支配階級との私生子にすぎないだろう。 ともかくも・・・ 有島武郎 「宣言一つ」
・・・千四百四十九年にバーガンデの私生子と称する豪のものがラ・ベル・ジャルダンと云える路を首尾よく三十日間守り終せたるは今に人の口碑に存する逸話である。三十日の間私生子と起居を共にせる美人は只「清き巡礼の子」という名にその本名を知る事が出来ぬのは・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・ 日本の戸籍と、公文書から、士族、平民、私生子という差別が徹底してとりのぞかれたのは、昭和十四、五年ころになってだろうか。侵略戦争を強行し、すべての人民を戦争目的に動員するために、日ごろの差別感情をとりのぞく必要が感じられたからであった・・・ 宮本百合子 「新しいアカデミアを」
・・・まして私生子というような区別を戸籍の上にさえおかない様になってきている今日、子供はすべて社会の子供として生命を保証される権利があります。そして私どもにはその義務があります。婦人少年局ができて婦人と小さい人の全生活に関する調査や提案を政府に向・・・ 宮本百合子 「“生れた権利”をうばうな」
・・・たとえば第二回のところではこの感情を中心的に扱っていて、一中に入ろうとした時、自分が私生子であるということを知ってたいへん苦しみ、うちへかえって嫌だ嫌だと気狂のように大荒れに荒れる、その絶望の心を書いている。そのきっかけは花村という少年が「・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・p.72のルカシュスの言葉〔欄外に〕 ドイツ ルーテル スコットランド ノックス フランス カルヴァンイタリーの乱脈 メディシスの私生子万歳時代への反動として。p.72 宗教改革とギルド=市民階級のもの、・・・ 宮本百合子 「バルザック」
・・・そして、允子は私生子として第一の出産を行うのである。生れた男の子は允男と命名された。「允男! 允男」「允子に取っては何よりも允男である。」やがて公荘の妻が病死し、允子は失職する。子供を抱えた生活が脅かされはじめ、允子は「結局女に残された一番・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・ 第二次大戦の間に民法における私生子の区別が撤廃された。なぜ沢山矛盾を持った民法の中で、特にこの条項だけがその忙しい時期に取上げられたのであろうか。私たちの常識は、一考して深く頷くところがある。日本の家族制度、財産の相続を眼目にした親子・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫