・・・も知らず、人の己れを誹る可きを弁えず、我家人の禍となる可き事を知らず、漫に無辜の人を恨み怒り云々して其結果却て自身の不利たるを知らず、甚しきは子を育つるの法さえも知らざる程の大愚人大馬鹿者なるゆえに、結論は夫に従う可しと言う。罵詈讒謗至れり・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・思想じゃ人生の意義は解らんという結論までにゃ疾くに達しているくせに、まだまだ思想に未練を残して、やはり其から蝉脱することが出来ずに居るのが今の有様だ。文学が精神的の人物の活動だというが、その「精神」が何となく有り難く見えるのは、その余弊を受・・・ 二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
・・・それから、まるで脱兎のような勢で結論にはいりました。「私はシカゴ畜産組合の顧問でも何でもない。ただ神の正義を伝えんが為に茲に来た。諸君、諸君は神を信ずる。何が故に神に従わないか。何故に神の恩恵を拒むのであるか。速にこれを悔悟して従順なる・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・ 一、民主的な社会で、大切なのは多数の人々の意見であり、多数の人々が自分の意見を出し合って、その結論を互に出発したところよりは高く豊富で合理的なところに育ててゆくのが大事な特長です。 一、輿論というと、むずかしく思えるけれども、誰で・・・ 宮本百合子 「朝の話」
・・・とにもふれられ「獄中の人と結婚せられた心理はわかるようで不可能である。ああいうことはオクソクの他であるが、私は無意味であると思っている」と結論しておられる。 私はその文章をよんで、女同士の共感というものも歴史性の相異によっては、全く裂か・・・ 宮本百合子 「新しい一夫一婦」
・・・ 対象と主体との相異対立がはっきり認識され、それを積極的に批評し、評価結論を下したところに、諷刺が現れる。対象を批評するときには、当然暴露がついて来る。 しかも、暴露の材料一々の具体性が分析される。従って対象と主体の置かれている一定・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・Hegel 派の極左党で、無政府主義を跡継ぎに持っている Max Stirner の鋭利な論法に、ハルトマンは傾倒して、結論こそ違うが、無意識哲学の迷いの三期を書いた。ニイチェの「神は死んだ」も、スチルネルの「神は幽霊だ」を顧みれば、古いと・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
・・・新井白石は本多家から頼まれてその考証を書いているが、結論はどうも言葉を濁しているように思われる。しかしそれがいずれであっても、同一書を媒介として惺窩、蕃山、本多佐渡守の三人の名が結びついているという事実は、非常に興味深いものである。 本・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
・・・でその時はこういう結論で物別れになったのが、気持ちよくなかった。しかしこの言葉が自分の頭に残って、幾度か反復せられている間に、だんだんそれが木下と離し難いものとなり、木下の特性を示すもののように思われて来た。今度彼の『地下一尺集』を読んで最・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
・・・――我々は現戦争のあらゆる著しい特質を見まわしたあとで、結局、最近の自然力支配は人間の罪悪と不幸とを一層深めた、という結論に到達する。すなわち解放せられた自然的欲望はその自由の悪用のゆえに貪婪の極をつくしてついに自分を地獄に投じた。人智の誇・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫