・・・ すでにいいかげん閑文字を羅列したことを恥じる。私は当分この問題に関しては物をいうまいと思っている。 有島武郎 「想片」
・・・ 五 根本問題の所在 この小さな紙幅に倫理学の根本問題を羅列することは不可能である。しかし具体的に問題の所在を示すために二、三の例証を引くことは絶対に必要である。 先ず道徳思想と道徳との弁別の問題がある。リップス・・・ 倉田百三 「学生と教養」
・・・ああ、なかの数字の羅列がどんなに美しく眼にしみたことか。少年は、しばらくそれをいじくっていたが、やがて、巻末のペエジにすべての解答が記されているのを発見した。少年は眉をひそめて呟いたのである。「無礼だなあ」 外はみぞれ、何を笑うやレ・・・ 太宰治 「葉」
・・・まことにこの利休居士、豊太閤に仕えてはじめて草畧の茶を開き、この時よりして茶道大いに本朝に行われ、名門豪戸競うて之を玩味し給うとは雖も、その趣旨たるや、みだりに重宝珍器を羅列して豪奢を誇るの顰に傚わず、閑雅の草庵に席を設けて巧みに新古精粗の・・・ 太宰治 「不審庵」
・・・と名づける道具で現わすことが困難であると同様にこの映画の律動的和声的要素の長所を文字の羅列で置き換えようとすることは、始めから見込みのないことでなければならない。 音楽における律動的要素の由来は、学問的に言えばなかなかむつかしい問題であ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ 海岸に戯れる裸体の男女と、いろいろな動物の一対との交錯的羅列的な編集があるが、すべてが概念的の羅列であって、感じの連続はかなりちぐはぐであり、従って、自分のいわゆる俳諧的編集の場合に起こるような愉快な感じは起こらない。人間も動物も同じ・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・分子の集団から成る物体を連続体と考えてこれに微分方程式を応用するのが不思議でなければ、色の斑点を羅列して物象を表わす事も少しも不都合ではない。 もう少し進んで科学は客観的、芸術は主観的のものであると言う人もあろう。しかしこれもそう簡・・・ 寺田寅彦 「科学者と芸術家」
・・・しも修飾することなしにそのままに記録するということが、かえって賢明なる本講座の読者にとってはまた特殊の興味があるかと思うので、なんら他を顧慮することなくして、年来の所見をきわめて露骨に、しかも無秩序に羅列したまでである。従って往々はなはだし・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・死んだ借り物の知識のこせこせとした羅列に優る事どれだけだか分らない。そして更に生徒を相手にし助手にして、生徒から材料を集めさせたりして研究をすすめればよい。 間違いを教えたとしてもそれはそれほど恥ずべき事ではない。また生徒の害にもならな・・・ 寺田寅彦 「雑感」
・・・ただ徒らに冗漫の辞を羅列して問題の要旨に触るるを得ざるは深く自ら慚ずる所なり。これに依って先覚諸氏の示教に接する機を得ば実に望外の幸いなり。 一 ある自然現象の科学的予報と云えば、その現象を限定すべき原因条件・・・ 寺田寅彦 「自然現象の予報」
出典:青空文庫