・・・住宅を建てた時でも色々な耐震的の工夫をして金目をかけたが、見かけの華美を求める心はなかったようである。 末広君の大学における講義にも特徴があったそうである。分量を少なく、出来るだけ簡易平明にして、しかも主要な急所を洩れなく、また実に適切・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・ 地震の時にこわれないためにいわゆる耐震家屋というものが学者の研究の結果として設計されている。筋かい方杖等いろいろの施工によって家を堅固な上にも堅固にする。こうして家が丈夫になると大地震でこわれる代わりに家全体が土台の上で横すべりをする・・・ 寺田寅彦 「鎖骨」
・・・しかし日本では濃尾震災の刺戟によって設立された震災予防調査会における諸学者の熱心な研究によって、日本に相当した耐震建築法が設定され、それが関東震災の体験によって更に一層の進歩を遂げた。その結果として得られた規準に従って作られた家は耐震的であ・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・そうしたら、家屋は、みんな、いやでも完全な耐震耐火構造になるだろうし、危険な設備は一切影をかくすだろうし、そして市民は、いつでも狼狽しないだけの訓練を持続する事が出来るだろう。そうすれば、あのくらいの地震などは、大風の吹いたくらいのものにし・・・ 寺田寅彦 「鑢屑」
出典:青空文庫