・・・ ――退屈な景色! ――ベザイスが、実はあんたのところの同じような山には、もうあきあきしてるんですと云ったわけだ。 芸術座小舞台で「我等の青春」という国内戦時代のコムソモールたちの感情、若さから誤謬は犯しながら雄々しく実践でそれ・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・ 午後になると往来はだんだん混みはじめ、芸術座前の狭い通りは歩道一杯の人だ。みると芸術座の入口に特別はり札が出ている。 本日は労働者のためだけに開演する。 前もって職業組合から切符を渡されているモスクワ中の勤労者はこの芸術座ばか・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・それだのに、どうして、芸術座はアンナ・カレーニナを上演し、名優タラーソヴァの演技は、世界の観客をうつのだろう。タラーソヴァと芸術座の演出者は、こんにち地球にのこっている資本主義の社会の上流で、アンナ・カレーニナの悲劇が生きられていることを歴・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・ 芸術座の人々が、自分達の持って生れた言葉でやってさえ、なかなかうまく行かなかったのだそうだから、翻訳文の欠点が当然つきまとう外国語でして、いきなり本物になれないのは寧ろあたりまえであろう。然し、マーシャが自分にひどく物足りなかったのは・・・ 宮本百合子 「「三人姉妹」のマーシャ」
・・・――大劇場……芸術座じゃあないのね、どうしてだろう」「これは、特別興行だな。ホラ、たった一日だけ演るんだもの、一時に大勢に観せてしまおうというわけなんだろ」 こんな問答をしている二人の日本女を、皮帽をかぶった少年が傍に立って好奇心を・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・チェホフとゴーリキーとで世界に馴染のモスクワ芸術座。国立アカデミー小劇場のように、革命以前からの古い伝統をもち、現在でも次に来るべき若いソヴェト演劇技術家指導に重大な役割を演じている劇場だ。 第二群は、革命以前から存在し、現在はソヴェ・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・十一月中旬の、まだ合外套も歩いてる午後七時の往来に小さい籠を持ったリンゴ売が出ている。芸術座小舞台へ入る門の前で、女が――プログラム! プログラム、十カペイキ!「我等の青春」のプログラム、十カペイキ! 気ぜわしい、金属的な、何だかひもじ・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
出典:青空文庫