・・・とお徳は人々がこの大事件を喫驚してごうごうと論評を初めてくれるだろうと予期していたのが、お清が声を出してくれた外、旦那を初め後の人は黙っているので少し張合が抜けた調子でこう問うた。暫時く誰も黙っていたが「どうするッて、どうするの?」とお・・・ 国木田独歩 「竹の木戸」
・・・ その後ナウハイムで科学者大会のあった時、特にその中の一日を相対論の論評にあてがった。その時の会場は何となく緊張していたが当人のアインシュタインは極めて呑気な顔をしていた。レナードが原理の非難を述べている間に、かつてフィルハルモニーで彼・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ 余談はさておき、この書物の一章にアインシュタインの教育に関する意見を紹介論評したものがある。これは多くの人に色々な意味で色々な向きの興味があると思われるから、その中から若干の要点だけをここに紹介したいと思う。アインシュタイン自身の言葉・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ かつてわたくしはこの時分の俗曲演劇等の事を論評した時明治十年前後の時代を以て江戸文芸再興の期となしたが、今向島桜花のことを陳るに及んで更にまたその感がある。 明治年間向島の地を愛してここに林泉を経営し邸宅を築造した者は尠くない。思・・・ 永井荷風 「向嶋」
・・・これまた止むを得ざる次第なれども、兎に角に明治年間にこの文字を記して二氏を論評したる者ありといえば、また以て後世士人の風を維持することもあらんか、拙筆また徒労にあらざるなり。 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・電話にて春陽堂へ『文学論評』の送付を促がす。売切の由答あり。二十五六日頃再版出来のよし」などと文化史的な興味深い記述の最後に「八重子『鳩公の話』といふ小説をよこす。出来よろし。虚子に送附」と書かれている。 ホトトギスに、その小説は掲載さ・・・ 宮本百合子 「含蓄ある歳月」
・・・文政五年は午であるので、俗習に循って、それから七つ目の子を以てわたくしの如きものが敢て文を作れば、その選ぶ所の対象の何たるを問わず、また努て論評に渉ることを避くるに拘らず、僭越は免れざる所である。 ―――――――――・・・ 森鴎外 「細木香以」
出典:青空文庫