・・・程よく、斬新な色調の織物、宝石の警抜な意匠、複雑な歯車、神秘的なまで単純な電気器具、各々の専門に従って置きかえる。 それ等の窓々を渡って眺めて行く私共は、東京と云う都市に流れ込み、流れ去る趣味の一番新しい断面をいつも見ているようなもので・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・それに反して警抜な表現とか巧みさを感じさせる言い回しとかは、ちょうど色のついたガラスのように、見えるものに色をつけてしまう。その色の好きな人は、あるいは好きな間は、その色が見えるというだけで喜びを感じるであろうが、その色のきらいな人、あるい・・・ 和辻哲郎 「歌集『涌井』を読む」
・・・『地下一尺集』に収められた警抜な諸篇は、生の重心をこの「享楽」に置いた作者の人格を、きわめてよく反映している。彼の描く人と自然とは、常に彼の「享楽」の光に照らされて、一種独特な釣合をもって現われてくる。非常に広濶な、偏執のない心が、あら・・・ 和辻哲郎 「享楽人」
出典:青空文庫