・・・私どもがもっとも銘記すべきことは、この三・一五の被告であった指導者のうち、非常に多数の人が今日の日本の民主化をあらゆる方法で邪魔している階級的裏切者に顛落している事実である。 佐野学、鍋山貞親、三田村四郎などという今日の勤労階級の敵は三・・・ 宮本百合子 「共産党とモラル」
・・・理論家ヴォロンスキーは最近妙な人道主義へ転落したが、昔、コムソモールや労農通信員の文学的創造性を尊重しなければならないと云った時は、完全に正しかった。その次代の交代者たるコムソモール、労農通信員たちの日常生活はどうであろうか? 彼等はめいめ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 復員兵士が犯罪へ転落するには、様々の動機があろう。けれども、新聞に「俺たちに、義理も人情もあるものか」と捨科白した記事がのった、一部の不幸な嘗ての兵士は、遠くない過去において、紛れもなく義理も人情もない扱いをうけて来た自覚をもっている・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・のなかに生きつつ、他の多くの例に見るように、それへの内面的抵抗を、歪んでも自分で歪みの見えない主観のなかに立てこもることで、即ち評論から随想へ転落する方便に求めていず、刻々の生きた動を執拗に文学の原理的な問題に引きよせて理論的に追究しようと・・・ 宮本百合子 「作家に語りかける言葉」
・・・作品の中で人間性の濃度を高めるためにこの作者は意企的に異常性格を持った嘉門とその妻松子、娘息子をとり来って、殆どグロテスクな転落の絵図をくりひろげたが、この作品の世界に対して作者は責任を感じていず、登場している私という中枢の人物は、本質的に・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・作家もこの誘惑には負けやすくて、思わぬ作家が思わぬ顛落ぶりを示した例は、日本にもどっさりある。いちじるしい顛落はしなくても、「中国文芸の方向」のなかで警告されているとおり、作家がこれによって自大主義に毒されやすい。文学上のボスになりやすい。・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・ 嘉村氏は、転落する地方地主の生活に突入っていわばその骨を刻むように書いているつもりなのであるが、結局その努力も主題を発展的な歴史の光によって把握していないから、現象形態だけを追うに止り自身の粘り、社会観の基調がいかに富農的なものである・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価によせて」
・・・ 集団農場から、箇別農場への転落というのは、ブルジュア新聞にさえ書いてない、あり得べからざる事実の間違いだ。数字で示そう。集団農場に組織された農戸数 一九二八年 四〇〇、〇〇〇 一九二九年 一・・・ 宮本百合子 「反動ジャーナリズムのチェーン・ストア」
・・・そういう情勢であるからこそ、いわばかつて個人的な作家的自負で立っていた時代のプロレタリア作家が、心理的支柱を見失って転落する必然があるのであろうか。 それにしろ、日本のインテリゲンチアが特殊な歴史的重荷をもっていることは争えない事実であ・・・ 宮本百合子 「冬を越す蕾」
・・・日本文学の歴史において一つの画期を示したこの自我の転落は、当事者たちの主観から、未来を語る率直悲痛な堕落としては示されず、何か世紀の偉観の彗星ででもあるかのような粉飾と擬装の下に提示され、そこから、文学的随筆的批評というようなものも生じた次・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
出典:青空文庫