・・・一、外部との通信、全部没収。一、見舞い絶対に謝絶、若しくは時間定めて看守立ち合い。一、その他、たくさんある。思い出し次第、書きつづける。忘れねばこそ、思い出さずそろ、か。(この日、退院の約束、断腸「出してくれ!」「やかま・・・ 太宰治 「HUMAN LOST」
・・・五一型のその機関車は、同じ工場で同じころ製作された三等客車三輛と、食堂車、二等客車、二等寝台車、各々一輛ずつと、ほかに郵便やら荷物やらの貨物三輛と、都合九つの箱に、ざっと二百名からの旅客と十万を超える通信とそれにまつわる幾多の胸痛む物語とを・・・ 太宰治 「列車」
・・・ 二 二千年前に電波通信法があった話 欧洲大戦の正に酣なる頃、アメリカのイリノイス大学の先生方が寄り集まって古代ギリシアの兵法書の翻訳を始めた。その訳は、人間の頭で考え得られる大概の事は昔のギリシア人が考えてしまっ・・・ 寺田寅彦 「変った話」
・・・国家の非常時に対する方面だけでも、煙幕の使用、空中写真、赤外線通信など、みんな煙の根本的研究に拠らなければならない。都市の煤煙問題、鉱山の煙害問題みんなそうである。灰吹から大蛇を出すくらいはなんでもないことであるが、大蛇は出てもあまり役に立・・・ 寺田寅彦 「喫煙四十年」
・・・たぶん外国からの通信の翻訳であろうと思うが、あの記事なども科学者の目には実に珍妙なものであった。よくよく読んでみるとなるほど重い水素Dからできた水のことと了解されるが、ちょっと読んだくらいでは実に不思議な別物のような感じを起こさせるという書・・・ 寺田寅彦 「ジャーナリズム雑感」
・・・たださし当っての方法としては南洋、支那、満洲における観測並びに通信機関の充実を計って、それによって得られる材料を基礎として応急的の研究を進める外はないであろう。 自分の少しばかり調べてみた結果では、昨年の颱風の場合には、同時に満洲の方か・・・ 寺田寅彦 「颱風雑俎」
・・・興行者と常習的観客の間には必ず適当な巧妙な通信機関がいろいろとくふうされるに違いない。 その他の多くの広告はたいてい日刊新聞によらなくてもすむものである。たとえば書籍雑誌の広告にしたところで、おそらく日本ほど多数でぎょうぎょうしいのはど・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・道太は呟いたが、何か東京の方へ通信があって、それで呼び返すための電報じゃないかと、ちょっとそういう疑いも起こった。ここへ来てから、彼は東京へ一度しか音信をしていなかった。しかしその疑いは何の理由のないことは自分も承知していた。「いったい・・・ 徳田秋声 「挿話」
・・・伊予にいる一旧友は余が学位を授与されたという通信を読んで賀状を書こうと思っていた所に、辞退の報知を聞いて今度は辞退の方を目出たく思ったそうである。貰っても辞してもどっちにしても賀すべき事だというのがこの友の感想であるとかいって来た。そうかと・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・連は焼気になって政府に面当をしているという通信だ。面白い。そうこうする内に十時二十分だ。今日は例のごとく先生の家へ行かねばならない。まず便所へ行って三階の部屋へかけ上って仕度をして下りて見るとまだ十一時には二十分ばかり間がある。また新聞を見・・・ 夏目漱石 「倫敦消息」
出典:青空文庫