・・・歴史の現実のそういう本質の契機にふれようと努力しないで、モーロアはさも自分が国家の機密に通暁している人物のように、アメリカというよその客間から客間とまわって、時代的ゴシップを喋っているに過ぎない。そのことで、彼自らが要するに、醜聞とともに書・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・ それには千葉先生が担任でなくて、一定の距離と自由のある位置にいられたこともよかったのだろうし、また、若い娘の感情に通暁していて、常にある程度は整理した心持で、甘えず信頼することを学ぶようにされたことも、よかったのだろう。 女学校の・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・「文章論に通暁して、言葉の上の間違いを仕出かさないぐらいでは、大詩人にはなれないて!」前時代の古典主義に対して彼はこう挑戦した。「芸術の使命は自然を模写することではない。自然を表現することだ!」「我々は事物の精神を、魂を特徴を掴えなくてはな・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・ イリーンが、科学の知識を、ああもわかりやすく、ああもよろこばしく語り得るのは、彼が、専門の知識に通暁しつくしていて、その上に、人類がより明るく智慧の光りに照らされて生きる愉しさを、知りつくしているからではなかろうか。知りつくしたことに・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
出典:青空文庫