・・・ 一人一人の作家がそれぞれにちがうという必然は、だが他面に何か通有な一つ二つの文学としての希望、願望、更につよくは意欲という風なものを持ってはいないだろうか。 どんな時代にも、作家は現実にたえるものとして自分の作品を生もうとして来た・・・ 宮本百合子 「日本の河童」
・・・こういう経歴の作家に通有な文学に於ける面白さが、やはりブルジョア文学の一部の作家がいう面白さと類似したもの或は卑俗さに於て何ら質的に異ったものではなくなって現れて来ているというのは何故であろう。 村山知義氏は一人の能才者である。彼は画を・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
・・・これはあるいは漱石に限らず私たちの前の世代の人々に通有な傾向であったかもしれない。私の父親などもそういうふうであった。私は父親から愛情を現わす言葉などを一度も聞いたことはない。言葉だけを証拠とすれば、父親には愛がなかったということになるが、・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
出典:青空文庫