・・・重苦しくてならぬ現実を少しでも涼しくしようとして嘘をつくのだけれども、嘘は酒とおなじようにだんだんと適量がふえて来る。次第次第に濃い嘘を吐いていって、切磋琢磨され、ようやく真実の光を放つ。これは私ひとりの場合に限ったことではないようだ。人間・・・ 太宰治 「ロマネスク」
・・・女子の方に適宜なれば男子の方は薬量の不足を感じ、男子に適量なりとすれば女子の服薬は適量にして必ず瞑眩せざるを得ず。女子は男子よりも親の教、忽にす可らず、気随ならしむ可らずとは、父母たる者は特に心を用いて女子の言行を取締め、之を温良恭謙に導く・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・砂糖の必要量がとれない条件があるからこそ、適量の必要が科学的に主張されなければならない。日本の主婦の科学精神がめざまされなければならないとしきりに云われる。科学の精神とは、決して食品のカロリー分析の能力ばかりをさしていない。砂糖を食品として・・・ 宮本百合子 「砂糖・健忘症」
出典:青空文庫