・・・ 耳を聾するような音と、眼を眩するような光の強さはその中にかえって澄み通った静寂を醸成する。ただそれはものの空虚なための静かさでなくて、ものの充実しきった時の不思議な静かさである。 はげしい音波の衝動のために、害虫がはたしてふる・・・ 寺田寅彦 「田園雑感」
・・・ 注目すべきことは、この文学的でないばかりか政治的でさえもない発言に応じて、専門文学者と職場作家との間に、一部の文化活動家とサークル員の側からの対立感情が醸成されたことである。「人民的リアリズム」論に無批判だった文学サークルの一部は、文・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・の出現を待望するのでなく、文学批評そのものに、新たな、発展的な客観性の確立を求める気分の醸成されていることは、見のがせないことである。その新しい動力となり得る気分を理解し、作品活動の中に正当に導き出して行くことこそ、「現実そのものから現実を・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
出典:青空文庫