・・・「どこか、名所は無いだろうか。」「さあ、」女中さんは私の袴を畳みながら、「こんなに寒くなりましたから。」「金山があるでしょう。」「ええ、ことしの九月から誰にも中を見せない事になりました。お昼のお食事は、どういたしましょう。」・・・ 太宰治 「佐渡」
・・・まちの誰かれ見さかいなくつかまえて来ては、その金山のこと言って、わたくしは恥ずかしくて死ぬるほどでございました。まちの人たちの笑い草にはなるし、朝太郎は、そのころまだ東京の大学にはいったばかりのところでございましたが、わたくしは、あまり困っ・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・まちの誰かれ見さかいなくつかまえて来ては、その金山のこと言って、わたくしは恥ずかしくて死ぬるほどでございました。まちの人たちの笑い草にはなるし、朝太郎は、そのころまだ東京の大学にはいったばかりのところでございましたが、わたくしは、あまり困っ・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・ 朝顔の色を見て、それから金山から出る緑砂紺砂の色、銅板の表面の色などの事を綜合して「誠に青色は日輪の空気なる色なるを知る」などと帰納を試みたりしているのもちょっと面白かった。 新しもの好き、珍しいもの好きで、そしてそれを得るために・・・ 寺田寅彦 「断片(2[#「2」はローマ数字、1-13-22])」
・・・そのわろは金山掘りのわろだな。さあさあみんな団子たべろ。食べろ。な、今こっちを焼ぐがらな。全体どこまで行ってだった。」「笹長根のおり口だ。」と一郎のにいさんが答えました。「あぶないがった。あぶないがった。向こうさ降りだら馬も人もそれ・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・前じきそこにあったんですが掛手金山の精錬所(ああ、金鉱を搗(ええ、そう、そう、水車って云えば水車でさあ。ただ粟や稗(そしてお家はまだ建たなかったんですね、いやお食事のところをお邪魔 学生は立とうとした。嘉吉はおみちの前でもう少してきぱき・・・ 宮沢賢治 「十六日」
・・・飛騨国では高山に二日、美濃国では金山に一日いて、木曽路を太田に出た。尾張国では、犬山に一日、名古屋に四日いて、東海道を宮に出て、佐屋を経て伊勢国に入り、桑名、四日市、津を廻り、松坂に三日いた。 一行が二日以上泊るのは、稀に一日の草臥・・・ 森鴎外 「護持院原の敵討」
出典:青空文庫