・・・プロレタリア文学は、勤労者の広汎な生活を文学にうつしつつ、同時に、大衆そのものが内蔵している文化と文学との新たな発展力、その開花を前途に期待した。作家と読者との関係は単に需要者・供給者の関係ではない肉親的交流において見られたのであった。・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・芸術、そして文学は、そもそもの本質が、人生を愛し、評価し、人一人の生命と創造力の大なる開花を歴史のうちに期待するものなのだから。 世界観について 文学作品の批評が、ごく素朴な、自然発生的な主観の印象に立って行わ・・・ 宮本百合子 「作家の経験」
・・・とにかく、第一節において、ジイドは、心を傾けてソヴェトに開花している日常生活の幸福そうな明るさ、行き届いた文化的施設、どこの国においてよりも深く強くヒューマニティーを感じさせる人間と人間との接触、共感、民衆が享有している非常に長い青年期の高・・・ 宮本百合子 「ジイドとそのソヴェト旅行記」
・・・したがって、その文化は、ゆたかな人々のために世界で最高の開花をとげていますが、貧しい人々、失業者たちの生活は、やはりじゃがいもを買うことに苦心しています。日本の資本主義の歴史的な弱さの上に、アメリカの文化の――いわゆる高度なる文化の――面だ・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・たちは、生産・政治・文化建設の面におけるプロレタリアートの勝利の確立とともに、ほうはいと高まった大衆のうちのプロレタリア化の可能性=文学においてはプロレタリア文学創造のより豊富な可能性を、十分指導し、開花させるために、すでに従来の組織ではこ・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・ヒューマニズムという言葉をきいた時、誰の胸にも浮ぶのはヨーロッパ文化に於ける文芸復興時代のヒューマニズムの多彩な開花であろう。ルネッサンスは中世の思想と社会が人間に強制していた種々の軛からの人間性の解放を叫んで、社会文化の各方面に驚くべき躍・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・ ルネッサンスはデスデモーナに、皮膚の色のちがうオセロを愛させる感情のひろがりをみとめたが、その愛を完成する知性までは開花させていない。ルネッサンス時代は文学作品ばかりでなく、絵画に彫刻に雄大な作品が花と咲き満ちた時期であった。けれども・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・イギリスの、又フランスの、新しい生活力の開花して行く様子の反映。ソヴェトの文化の研究。これらすべては私たちの成長のために欠くことの出来ない栄養である。〔一九四六年五月〕 宮本百合子 「新世界の富」
三四年前、いろいろなところで青年論がされたことがあった。そのときは、現実の社会生活と文化との間にヒューメンなものの可能を積極的に見出してその成長や開花を求めてゆこうとしていた日本の精神のあらわれの一つとして、多くの可能をひ・・・ 宮本百合子 「生活者としての成長」
・・・何かそういう類の微妙な空気の状態が、蓮の開花と連関しているのかもしれない。その点から考えると、気温の最も低くなる明け方が、最も開花に都合のいい時刻であるかもしれない。しかしそれにしても、あの妙な音は何だろう。それを船頭にただしてみると、船頭・・・ 和辻哲郎 「巨椋池の蓮」
出典:青空文庫