・・・例えば時代や、季節や、人間の階級や、死因や、そういう標識に従って類別すれば現われ得べき曲線上の隆起が、各類によって位置を異にしたりするために、すべてを重ね合すことによって消失するのではあるまいか。 このような空想に耽ってみたが、結局は統・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・音楽のサークルへ参加して来る若い人々の労働の種類は類別された。しかし、さらにもう一歩踏みこんで、もっと科学的な方法で、一定の労働、その労働によるエネルギーの消耗、それに応じて一定の色彩に対する感覚的反応、または音楽音に対する感情の波動が、純・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・作家はおとなしくその類別に従って来た。けれども、少し考えると妙だと思える。 作家は、大部分が出版企業に結びつけられて、真の儲けは、出版屋が吸いとっている。これは明々白々である。皮肉にいえば、粗末なタネであることを自ら知っている作家だけが・・・ 宮本百合子 「作家への新風」
・・・『改造』『中央公論』などという綜合雑誌の発行所がその雑誌の属する第七部とかには出ていないで中央公論社は、『婦人公論』で第五部に、改造社は『短歌研究』、『俳句研究』で、研究社の『英語研究』と同じ類別のなかにくまれていたと書かれていたように記憶・・・ 宮本百合子 「日本文化のために」
・・・そこで彼らは五十余頁にわたる類別商店会案内の後でいきなり痛切な活字の叫びに捉えられるだろう。 ――助けよ ――一杯やる前に遺言に署名せよ。貴君の遺言中に当院への遺贈を記入されんことを。 ――何処にあるか。 何をしているか・・・ 宮本百合子 「ロンドン一九二九年」
・・・青年のうちにまたなかなか複雑な型の類別が生じている。男の貞操とか女の貞操とか対比的によく問題となってきている。これまで、男といえば菊池氏流に、貞操というようなものはないもの、多妻的本性によって行動するものと単純に自覚されてきているが、現代の・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
・・・ 二 人間の生存過程を、学として研究し或る法則、類別を見出す心理学者、生理学者等は、各個人の運命的な時期、年齢を、青年期、更年期と大別しているようです。 青年期は、十六七歳から二十二三歳迄、更年期は丸四・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・動物学的に類別せられた「人類」は自然物であって、価値とは関係がない。が、我々が奉仕すべき対象としての「人類」は、「心なき物質」ではなくして、真善美の樹立をその事業とする大いなる「心」でなくてはならぬ。 自分は岸田君がこの事を感じて人類へ・・・ 和辻哲郎 「『劉生画集及芸術観』について」
出典:青空文庫