・・・ 夏目先生、虚子、鼠骨、それから多分四方太も一処で神田連雀町の鶏肉屋でめしを食ったことがあった。どうした機会であったか忘れてしまった。その時鼠骨氏が色々面白い話をした中に、ある新聞記者が失敗の挙句吾妻橋から投身しようと思って、欄干から飛・・・ 寺田寅彦 「高浜さんと私」
・・・ 高浜、坂本、寒川諸氏と先生と自分とで神田連雀町の鶏肉屋へ昼飯を食いに行った時、須田町へんを歩きながら寒川氏が話した、ある変わり者の新聞記者の身投げの場面がやはり「猫」の一節に寒月君の行跡の一つとして現われているのである。 上野の音・・・ 寺田寅彦 「夏目漱石先生の追憶」
・・・中に鶏肉が入っていた。歩くにつれて包みを振る手が前、後、前、後。それにつれて斑犬もひょいと駈け、鼻面を引こめ、またひょいと駈け跟いて来る。佐和子がおかしがって、「やあ父様についちゃった、かぎつけた」と囃した。「ほんと! ほんと! お・・・ 宮本百合子 「海浜一日」
・・・肉類にしても、東京の堅い鶏肉はあまり好みません。特に好物といえばあい鴨です。 野菜では、胡瓜とかサラダとか、見た眼に新鮮な感じのするものを好みます。殊に五月時分、はしりの胡瓜をなまのまま輪切りにして塩をつけてたべるのは、毎年その季節の楽・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
出典:青空文庫