・・・ これに反して停車場内の待合所は、最も自由で最も居心地よく、聊かの気兼ねもいらない無類上等の Caf である。耳の遠い髪の臭い薄ぼんやりした女ボオイに、義理一遍のビイルや紅茶を命ずる面倒もなく、一円札に対する剰銭を五分もかかって持て来る・・・ 永井荷風 「銀座」
・・・然るに二十年後の今日に到っては日本全国ビーヤホールの名を掲げて酒を估る店は一軒もなく、そうふも滑に Caf の発音をなし得るようになった。 さればカッフェーの創設者たる松山画伯にして、狡智に長けたること、若しかの博文館が二十年前に出版し・・・ 永井荷風 「申訳」
・・・日没美しいcaf を一つのみマカロニーつくる。父も工合わるいスエ子と自分フジへ行ってすきやきサンミッシェルの角まで歩いて車 コンコードの美しさ 十時ごろはもう消える夜十一時頃 ホテルモンソーへかえる・・・ 宮本百合子 「「道標」創作メモ」
出典:青空文庫